HandeVision IBELUX 40mm F0.85 日常を非日常に変える大口径という魔法(File01)

イベルックス40ミリF0.85を持ち上げた瞬間、その手応えにハッとした。この存在感、ライカRのズミルックスあたりとよく似ている。金属とガラスの塊であることが、手のひら一面に伝わってくる。トラディッショナルなストレートデザインの鏡胴、羽を広げたような被写界深度目盛り、そして絞りリングの「0.85」の刻印。駆け出しの頃、先輩カメラマンから聞いた「良く写るレンズはデザインも良い」という言葉を思い出した。

X-Pro1にイベルックス40ミリF0.85を付け、お気に入りのスポットを撮り歩く。ミラーレス機用大口径MFレンズのイベルックス40ミリF0.85は、APS-C機に付けると35ミリ判換算60ミリ相当となる。気負わずに使える標準画角のレンズだ。

開放時の被写界深度は極端に浅く、EVFでていねいにピントを合わせていく。APS-C機でこれまで見たこともないような、大きくなだらかなボケの海が広がる。見慣れたはずの光景が、まるで別世界に見える。これだけ大口径になると、中距離でボケを活かした撮影も難なくこなせるだろう。合焦部は滲みがよく抑えられ、F0.85という超弩級のスペックのわりにその描写は至って正統派だ。

描写のみならず、操作フィーリングにも気配りが感じられる。フォーカスリングはドイツおよびスイス製のベアリングシステムを採用し、トルクフルで開放近接のようなシビアな場面でも確実なピント合わせが可能だ。絞りリングはクリック感のあるタイプで、1段ずつ小気味よくコントロールできる。昨今、ミラーレス機向けの大口径レンズはムービー向けであることが多いが、このイベルックス40ミリF0.85はスチル派のマインドをていねいに汲み取っている。描写と操作の両面で安心感のあるレンズだ。

 

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X-Pro1 + IBELUX 40mm F0.85

絞り優先AE F0.85 1/2000秒 -1.33EV ISO200 AWB JPEG ND4 Filter
朽ちた杭に開放でピントを合わせた。APS-C機でありながら、前後の大きくなだらかなボケが印象的だ。

 

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X-Pro1 + IBELUX 40mm F0.85

絞り優先AE F8 1/80秒 -0.67EV ISO200 AWB JPEG ND4 Filter F8で遠景を撮影した。
四隅がわずかに甘いものの、中央部のシャープさは優秀だ。
奥の木々は葉一枚まで解像している。

 

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X-Pro1 + IBELUX 40mm F0.85
絞り優先AE F0.85 1/3800秒 -1.33EV ISO200 AWB JPEG ND4 Filter
二線ボケが出やすいシーンだが、うまく持ちこたえてくれた。開放時のコントラストもわるくない。

 

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X-Pro1 + IBELUX 40mm F0.85

絞り優先AE F0.85 1/120秒 +1.33EV ISO200 AWB JPEG ND4 Filter
しだれ柳を開放で狙う。前ボケを活かし、幻想的なイメージに仕上げてみた。

 

製品紹介

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HandeVision IBELUX 40mm F0.85

KIPONの製造元である上海伝視と、ドイツの光学研究所IB/Eオプティックスが協業し、新レンズブランドHandeVisionを設立した。本レンズは同ブランドのファーストプロダクツで、ミラーレス機用として世界でもっとも明るい大口径標準レンズである(2014年12月現在)。キヤノンEF-Mマウント、ソニーEマウント(APS-C)、富士フイルムXマウント、マイクロフォーサーズマウントに対応する。

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