Carl Zeiss Jena Tessar 3cm F2.8 ロボットテッサーのフレアが好きだ!(File06)
ロボットというカメラをご存じだろうか。ドイツのオットー・ベルニング社が製造し、ゼンマイ式の連続撮影に対応したカメラとして有名だった。元々は監視カメラや軍事用に開発されたものだが、民生機も人気があり、カールツァイスイエナやシュナイダーがレンズを提供していた。
さてこのロボットだが、ゼンマイ式連続撮影の他にも大きな特徴がある。それはフィルムフォーマットだ。35ミリフィルムにスクエアフォーマット(24×24ミリ)で記録するという変わりダネのカメラである。実はこのフォーマットサイズが、デジタル撮影と好相性なのだ。APS-Cイメージセンサーの長辺は約24ミリ。つまり、APS-Cミラーレス機にロボットマウントのレンズを付けると、長辺方向に関してはレンズ本来の画角で撮れるのだ。
数あるロボット用レンズから、ここではテッサー3センチF2.8を選んでみた。パンケーキタイプのレンズで、ミラーレス機用の対応マウントアダプターが薄作りということもあり、極めてスマートなスタイルに収まる。物欲刺激系のちょっとマニアックなテッサーだ。
描写面ではフレアの出方が心地良い。逆光はむろん、半逆光程度でやさしいフレアがあらわれる。では軟調レンズかというと、そうではない。ナチュラルなコントラスト、適度に鋭いシャープネスは、やはりテッサーならではの安定感がある。やさしさと硬さの案配が絶妙なオールドテッサーだ。
マウントアダプターはKIPON製のROBOT-FXを用いた。アダムスキー型のUFOを思わせるおもしろいデザインのマウントアダプターだ。ロボットレンズはスクリューマウントなので、レンズをねじ込むだけで簡単に装着できる。今回用いたレンズとの組み合わせでは、無限遠はわずかにオーバーインフだった。とはいえ無限遠から近接まで支障なく撮影でき、APS-Cミラーレス機のユーザーにお薦めのセットアップだ。
X-Pro1 + Tessar 3cm F2.8 絞り優先AE F5.6 1/30秒 -2EV ISO200 AWB RAW
路地裏に射す光に合わせ、うっすらとフレアのベールがかかる。このやさしさが絶妙だ。
X-Pro1 + Tessar 3cm F2.8 絞り優先AE F2.8 1/210秒 -0.67EV ISO200 AWB RAW
ガラス越しのワインボトルにピントを合わせる。開放から申し分ないシャープさだ。
X-Pro1 + Tessar 3cm F2.8 絞り優先AE F2.8 1/1400秒 -1.33EV ISO200 AWB RAW
順光ならこれだけしっかりとしたコントラストが付く。この安定感がテッサーの強みだ。
X-Pro1 + Tessar 3cm F2.8 絞り優先AE F8 1/170秒 -1.33EV ISO200 AWB RAW
シャドウがわずかに浮き気味だが、暗がりがうっすらと見える描き方に妙味がある。
製品紹介
KIPON ROBOT-FX
ロボットレンズに対応したマウントアダプター。取り付けはスクリュー式だが、手持ちのロボットレンズを試したところ、レンズ指標はほぼ真上にきて使いやすかった。ロボットローヤルのレンズには未対応なので注意しよう。富士フイルムXマウントをはじめ、ソニーEマウント、マイクロフォーサーズマウント用をラインアップしている。