Ultron 50mm F1.8 ボケに酔うなら凹みウルトロン(File09)

ボケのきれいなオールドレンズと言えば、アルパのマクロスイター50ミリF1.8が有名だ。では、ボケの大きなレンズと問われたら、あなたは何を思い浮かべるだろう。おそらく大口径レンズをいくつかリストアップしたにちがいない。ところが、大口径タイプでなくてもボケ量を稼げるレンズがある。それがカールツァイスのウルトロン50ミリF1.8、通称凹みウルトロンだ。

ウルトロンは元々フォクトレンダーのレンズブランドだった。1960年代、フォクトレンダーはカールツァイスに吸収合併されてしまう。その後、カールツァイスはイカレックス35という一眼レフを開発し、そのカメラの標準レンズとしてウルトロンを復活させる。ここで取り上げるウルトロンは、このイカレックス35用のレンズである。

ウルトロン50ミリF1.8は前玉に凹レンズを用いているのが特徴だ。スタンダードなF1.8クラスの標準レンズでありながら、この凹レンズのおかげで大きなボケが生まれると言われている。事の真偽は定かではないが、実写結果を見ると、たしかに一般的なF1.8クラスの標準レンズよりボケが大きく感じられる。アウトフォーカス部が一気にボケる印象と、開放からコントラストが強いことが相まって、被写体が切り立って見える。実際のボケ量はさておき、ボケが大きく見えるのは確かだ。

マウントアダプターはKIPONのマクロヘリコイド付きを選んでみた。マウントアダプターにヘリコイドが組み込まれ、これを繰り出すことでレンズの最短撮影距離からさらなる接写が可能だ。最短撮影距離が長めのレンズでも、テーブルフォトや小物撮影で活躍してくれる。ウルトロン50ミリF1.8は元々よくボケるレンズだが、マクロヘリコイドアダプターのおかげでより大きなボケが楽しめるわけだ。 

ここではゴーグル付きのズミクロン35ミリF2をL/M-S/E Mと組み合わせてみた。ゴーグル搭載のためそれなりに重量のあるレンズだが、L/M-S/E Mのヘリコイドを快適にまわすことができた。細かいローレットで指が滑らず、確実に回転できるためだろう。むろん、フルサイズのα7シリーズでケラレなく使用でき、無限遠は若干オーバーインフで中上級者には使いやすい仕様だ。

ズミクロン35ミリF2はそもそも安定感のある描写だが、最短撮影距離よりも短い距離で撮影した際も、開放から描き方が安定していて使いやすい。特に開放近接でのボケに落ち着きがある。ズミルックス35ミリF1.4だと開放はかなり暴れていたので、寄って撮るならズミクロンの方がハンドリングしやすいだろう。

 


α7S + Ultron 50mm F1.8 絞り優先AE F1.8 1/1250秒 +0.7EV ISO200 AWB RAW
開放F1.8でも滲みはよく抑えられている。後ボケがややザワつくが、前ボケはきれいだ。

 


α7S + Ultron 50mm F1.8 絞り優先AE F1.8 1/2000秒 -0.7EV ISO200 AWB RAW
マクロヘリコイドアダプターで被写体にグッと寄る。前後の大きなボケが圧巻だ。

 


α7S + Ultron 50mm F1.8 絞り優先AE F2.8 1/5000秒 +0.7EV ISO200 AWB RAW
発色はナチュラルで心地良い。開放近辺はやや周辺光量が落ちる。



α7S + Ultron 50mm F1.8 絞り優先AE F4 1/640秒 -0.7EV ISO200 AWB RAW
隅々まで解像し、破綻のない描き方だ。自然なコントラストの付き方も良い。

 

 製品紹介

KIPON M42-NEX M

M42マウントアダプターにヘリコイドを組み込み、レンズの最短撮影距離よりも短い距離で接写を可能にする。レンズを最短撮影距離にセットして、マウントアダプター側のヘリコイドを繰り出して撮影しよう。KIPONのマクロヘリコイドアダプターは主要なマウントに対応している。

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